Chihiro SHIMIZU  清水千弘 本文へジャンプ
Workshop

第01回研究会申込み

01(超高齢社会研究部会) :申込み 07/27, 17:00-18:30

「「誰もが困っている相続問題。相続対策は誰の仕事か?
~共感して寄り添い、解決する相続の実務家が必要~」
講師: 曽根 恵子(株式会社夢相続)

都市不動産科学ワークショップ(Aging) 2021:

都市の衰退局面・超高齢化社会における資産の継承について考える

 

オーガナイザー: 清水千弘(東京大学空間情報科学研究センター・麗澤大学都市不動産科学研究センター)

主催: 東京大学空間情報科学研究センター,麗澤大学都市不動産科学研究センター

 

趣旨:

21世紀に入ると,日本は人口減少期に入り,世界でもっともはやい速度で高齢化が進んだ。そのような中で,不動産市場では,東京をはじめとする大都市を除くと空き家は増加し続けており,10年後には,住宅ストックの四分の一が空き家になるといった予測が出されている。加えて,国土の10%を超える土地の所有者が,所有権を放棄してしまうことで,土地の権利者を特定することができない「所有者不明土地」と呼ばれる土地が急増している。日本の地方都市では,すでに人口減少と高齢化の進展が20世紀後半から始まっており,21世紀初頭には財政破綻を起こした自治体も出現する中で,「消滅自治体」という言葉も出始めている。このような事象の背後には,人口動態も含めて,どのような経済メカニズムが存在しているのであろうか。

人口が減少したからといって,または高齢化が進むからといって住宅価格が暴落するわけではない。日本の経験では,戦後のベビーブームによって誕生した世代が壮年期に入ることで,戦後の高度経済成長をけん引した。いわゆる「人口ボーナス期」となる。そして,そのベビーブーマー世代が住宅購入者となって住宅市場に参入してきた1980年代前半に,戦後最大の住宅需要を生み出し,「不動産バブル」が生成するきっかけとなった。当時は,日本全体に「楽観的」な雰囲気が蔓延していた。バブルが崩壊した1990年を境として日本の就業人口は減少の一途をたどり,近年においては,デフレ,低経済成長率と併せて,不動産市場では,高い空き家率と所有者不明土地の増加に苦しんでいる。いわゆる「人口オーナス期」を迎えている。そして,このような問題が露呈していく中で社会全体に「悲観的な」雰囲気が蔓延した。このように史実を積み上げていくと,不動産市場の大規模な変動と景気後退との間には,「人口要因」が密接に関係しているように考えることは自然であろう。

しかし,人口動態の変化は極めて緩慢である。もし将来の悲観的な人口予測を受けて,住宅供給が弾力的であるのであれば,ストックの調整機能を通じて,価格は調整されるために住宅価格の暴落は発生しないはずである(Hendershott (1991), Hamilton (1991))。つまり,1)住宅供給が弾力的で,2)需要予測が合理的または完全予見ならば,予想可能な人口動態の変化は事前に住宅価格に織込まれるといった対立した指摘が出された。実証研究においても,Engelhardt and Poterba (1991)では,人口動態の変化と住宅価格の変動には統計的に有意な関係が見られないとの結果を報告した。

高齢化が世界で最も早く進み,人口減少にも直面している日本を対象とした同様の研究 (Ohtake and Shintani (1996))でも,人口動態の変化は,供給制約のある短期においては住宅価格の変動に影響を与えるものの,長期においては住宅供給が調整されるため,人口動態の変化は住宅価格に影響を与えないとの結果を導いた。また,Mankiw and Weil (1989)の枠組みを用いて住宅需要を推計し,日本と米国のそれぞれの地域的な異質性も考慮したパネルデータ(日本は都道府県別,米国は州別)でモデルを拡張したShimizu and Watanabe (2010)においても,住宅需要の変動のショックは,長期的には住宅価格の変動には影響を与えていなかったことを示した。

しかし,近年において急増する日本の空き家や所有者不明土地の状況を見ると,住宅供給はどれだけ弾力的なのかといった疑問が出てくる。とりわけ住宅を構成する重要な要素の「土地」は償却不可能な実質資産であり,その供給量には制限があるので,むしろ非弾力的である。この場合,仮に期待形成が合理的あるいは完全予見であっても,人口動態が資産価格に影響する可能性が生じる。

つまり,人口減少や高齢化を通じて住宅需要が減少することがあっても,正しくストックの調整がなされていけば,住宅価格の暴落も起こらなければ,所有者が不明になるような土地も増加していかない。資産価値が高いことで,相続人間での調整が困難となり,土地が分割されたりするような事態も発生しない。

そうすると,ここで求められる機能は,社会で正しく資産を継承していく仕組みをどのように作り上げていくのかということである。不要になった資産を放置するのではなく,血縁関係をも超えて,社会全体で引き継いでいく仕組みができていれば,利用価値が高い住宅であればそのまま社会に引き継がれ,それを失った住宅は滅失させていけばいいということになる。

ここで問題になるのが,生前贈与または相続といった資産移転の機能が十分に作用していないということである。人間の寿命が長くなる中で,建物の耐用年数との整合性が一致しないことも出てきている。相続のタイミングも高齢化することで,住宅の継承に対する血縁間でのモチベーションが大きく低下してしまったことも大きな原因となる。高齢化社会を正しくデザインし,地域の持続性を担保できる相続制度を含む資産の継承を円滑に進めることができるように,法整備も進めていかないといけないものと考える。

本研究会では,そのに様な問題意識の下で,資産の世代間移転に焦点を当て,とりわけ実務的視点から,専門家としてどのようなことができるのか,政策としてどのような取り組みがなされているのかを理解することを目的とする。

  

 

スケジュール:

01(超高齢社会研究部会) :申込み 07/27, 17:00-18:30

講師: 曽根 恵子(株式会社夢相続)

 

02(超高齢社会研究部会) :申込み 09/28, 17:00-18:30

講師: 鈴木 真行 (スターツ信託株式会社)

 

03(超高齢社会研究部会) :申込み 11/30, 17:00-18:30

講師: 谷口 佳充(三井住友信託銀行人生100年応援部)

 

04(超高齢社会研究部会) :申込み 01/25, 17:00-18:30

講師: 武藤 祥郎 (東京大学不動産イノベーションセンター)

 



[*] 本研究会は,一般社団法人相続実務協会のフィナンシャルサポートによって開催されています。