グローバルチェンジとサステナビリティ: Global Change and Sustainability

 
リーマンショックを契機とした金融危機は,世界経済に対して甚大な影響をもたらした。そのような中で,新しい経済社会を再構築しようとする様々な動きが始まっている。その一つが,低炭素社会の実現に向けての取り組みである。国際的には,UNEP(United Nations Environment Programme:国連環境計画)のFI(Financial Initiative)で議論が行われ,2008年6月に報告書「Building Responsible Property Portfolios」としてその成果が公表されるとともに,翌月には「Responsible Property Investment: What the leaders are doing?」が公表された。このなかでは,「責任ある不動産投資」として,「環境」の要素をしっかりと織り込んでいくことの重要性が指摘されている。
このような世界的な動きが進む中で,わが国は政策的な対応の遅れのために明確なビジョンが共有されないまま,一向に改善される兆しは見られていなかった。この中で,東日本大震災が発生した。多くの企業においてエネルギーが不足することで,企業活動の停滞を余儀なくされている。このような経験をして,初めてエネルギーへの依存リスクを認識した家計や企業は多いのではないであろうか。
 ここで重要な視点として浮き上がってくるのが,持続可能性(Sustainable)である。英国では不動産投資家も参加して定めた「持続可能な建築物基準:Sustainable Property Index」の定義の中では,単に低炭素への適応といった環境対応だけではなく,地球温暖化への適用(Adaptation to Climate Change)を広義にとらえている。例えば,地球温暖化の中で海面上昇が深刻化する中でリスクとして認知され始めた,「洪水リスク(flood risk)」への対応も含まれている。このような形でリスクが定義されてくれば,そのリスクをどのようなマネジメントしていこうかという発想が生まれる。そして,建築物が持つ様々なリスクをコントロールすることで,建築物の価値の持続性が担保されるのである。
 わが国では,環境対応への遅れだけでなく,このようなリスクに対しても政策的に無防備なままである。集中(ゲリラ)豪雨への対応,今回まざまざと見せつけられた津波への対応,もちろん言うまでもないことであるが耐震性の強化など,「持続可能な建築物」には多くの要件が要求される。それは,単に「建造物」としての持続可能性ではなく,「機能」が維持できるかどうかという点が重要である。電力が止まったら,水に一度でも浸水したら,建築物としての機能が停止してしまうようでは,持続可能性があるとは言えない。建築物の持続可能性とは,単なる技術基準に基づくハード面の基準だけでは不十分なのである。
 様々なリスクへの対応は,建設技術力で対応できるものが多い。また,政策当局としては,情報整備や公開,ガイドライン作りなど,やらなければならないことが多々ある。
 世界は大きく動き始めていること(グローバルチェンジ)を認識し,持続可能性(サステナビリティ)の高い社会を実現していただきたい。

麗澤大学経済学部教授・ブリティッシュコロンビア大学経済学部客員教授
清水千弘