Chihiro SHIMIZU  清水千弘 本文へジャンプ
Workshop

都市不動産科学ワークショップ(ファイナンス) 2021:

地方創生と不動産投資のフロンティアを考える

 

東京大学空間情報科学研究センター,麗澤大学都市不動産科学研究センター

(非公開)

趣旨:

2001年の上場リート市場の誕生が不動産投資市場元年とすれば,わが国に不動産投資場が誕生して20年が過ぎようとしている。その上場リート市場は22兆円の規模までに拡大し,私募リートも含めれば,40兆円をも超える。さらに近年においては,年金基金や郵貯などの機関化された資金の不動産投資も本格化してきた。このような不動産投資市場の構築には,20世紀後半から多くの先人たちの強い想いと並々ならぬエネルギーが投下され,そこに多くの参加者を加えながら,一つの産業として成長してきた。そして,20世紀の黎明期に描いた不動産投資市場の理想的な姿へと,ゆっくりではあったが進化し,近づいてきたと言ってもいいであろう。それでは,不動産投資市場は,これからも成長余力はあるのか,今後,どのような方向へと向かうべきなのであろうか。また,黎明期において予見できなかった新しい未来は,また描くことができるのであろうか。

不動産投資市場が果たした最も大きな貢献は,不動産市場の民主化であろう。20世紀までの不動産投資市場は,ごく限られた一部の大きな資本を持つ企業だけしか投資ができないような市場であった。しかし,証券化という技術が登場し,不動産投資のリスクを細分化することを可能とすることで,そして,上場市場を誕生させることで,家計をも含む多くの参加者を不動産投資市場の中に取り入れることを可能としてきた。個人投資家を不動産投資市場に参入させるために,市場の透明化を進めるとともに,投資から発生するリスクを管理していく技術も大きく進化していった。そのような中で,不動産市場そのものの効率化も大きく進化していったものと考える。さらに,家計に対しては,従来は,資産形成において預金・株式投資・国債などの債券投資しかなかったところに,不動産投資のリスクを組み入れやすくすることで,リスク分散効果が働きやすくなったという点も評価されるべき点である。

しかし,残された課題も少なくない。上場リート市場の投資家層は,広い裾野への拡大が期待されたが,実際には,一部の投資家層に限定されてしまっている。具体的には,多くのシェアの投資家は,年齢の高い,投資経験が豊富な富裕層といった性格が強い。不動産投資の分散効果という性質を考えれば,本来であれば,若年層からの積み立てなどにふさわしい。しかし,現在の商品性では,株式と投資としての性格が強く,一口当たりの金額も大きいことから,そのような投資資金の受け皿にはなりにくい。リートを組み込んだ投資信託などの金融商品もあるが,レバレッジが強くかかっているために,一層エクイティとしての性格が強くなり,本来の不動産の投資の魅力を低下させてしまっている。また,現在のミレニアム世代には,単純な投資収益や分散効果だけでは,大きな投資のドライバーになるとも考えづらい。

本研究会では,不動産投資市場の新しい市場を創生するために,二つの大きな軸を設定する。第一が,持続可能性の高い社会を実現するための未来への投資であったり,社会課題を解決しようとしたりする取り組みへの投資といった従来とは異なる基軸による投資リターンの定義化である。第二が,多くの参加者を巻き込むことができるような,投資規模の小口化である。

後者については,新しいテクノロジーを活用することで実現可能性が高まった。具体的には,STO(Security Token Offering)の活用である。STOとは,ブロックチェーン上で発行されたトークンを用いた資金調達方法のことを指し,スマートコントラクトの技術を組み込むことで,証券の小口化と配当の支払いの自動化を通じてコストを大きく引き下げることを可能とした。そのため,不動産の所有権の分割コストの低下を通じて,多くのすそ野を巻き込むことができるような投資可能なサイズへと小口化をすることができる。

 本研究フォーラムでは,上記の二つの視点に基づき,産官学が一体となって,新しい不動産投資市場のデザインをすることを目的とする。

 

スケジュール:

 

01(次世代不動産投資研究部会):(09/14) 17:00-18:30

 講師: 室 剛朗(株式会社価値総合研究所研究員)

地方創生と不動産投資

 

02(次世代不動産投資研究部会):(10/12) 17:00-18:30

 講師: 鈴木 あおい (国土交通省不動産・建設経済局不動産市場整備課課長)

地方創生と不動産金融

 

03(次世代不動産投資研究部会):(11/16) 17:00-18:30

 講師: 内田 高弘 (ケネディクス株式会社執行役員)

  不動産投資のフロンティア

 

04(次世代不動産投資研究部会):(12/07) 17:00-18:30

 講師: 中嶋 敏貴(株式会社Lifull不動産ファンド推進事業部 部長)

地方創生の実践

 

05(次世代不動産投資研究部会):(01/11) 17:00-18:30

 講師: 西岡 敏郎 (一般財団法人日本不動産研究所上席主幹)

 森林ファンドと地方創生

 

06(次世代不動産投資研究部会):(02/15) 17:00-18:30

 講師: 成本 治男(TMI総合法律事務所・パートナー)

地方創生・不動産投資の残された課題

 

 

体制

オーガナイザー

清水 千弘

東京大学空間情報科学研究センター特任教授/日本大学スポーツ科学部教授/麗澤大学都市不動産科学研究センター長・特任教授

メンバー

鈴木 あおい

国土交通省不動産・建設経済局不動産市場整備課課長

 

中平 英典

農林水産省大臣官房政策課上席企画官

 

水谷 登美男

金融庁監督局銀行第二課兼総務課課長補佐

 

橋本 幸広

三井住友信託銀行不動産企画部 デジタル戦略推進室長

 

成本 治男

TMI総合法律事務所・パートナー

 

矢口 一成

株式会社ゆうちょ銀行市場部門常務執行役員不動産投資部長

 

榊原 昭嘉 

岡崎信用金庫・理事

 

安田次郎

大垣共立銀行執行役員・IT統括担当

 

西岡 敏郎

一般財団法人日本不動産研究所 上席主幹

 

内田 高弘

ケネディクス株式会社 執行役員

 

平出 和也

スターツアセットマネジメント株式会社 代表取締役

 

中嶋 敏貴

株式会社Lifull不動産ファンド推進事業部 部長

 

室 剛朗 

株式会社価値総合研究所

 

菅田 修

三井住友トラスト基礎研究所

 

福田 和則

エンジョイワークス株式会社 代表取締役